浅野中学校 図書館司書インタビュー「本を手に取ってもらえるような場を提供したい」と、僕は常々考えている。

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取材日:2016年12月10日 インタビュイー:司書教諭 指田章先生

インタビュアー:東京大学1年生 平井貴之 吹奏楽部OB

1. 在庫書籍数

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平井:まず基本的な質問ですが、在庫書籍は何冊ぐらいありますか?

指田先生:昨日の段階で、図書と雑誌を合わせて4万9600冊。DVDが350枚なので、全部合わせると5万冊に乗るか乗らないかぐらいです。 平井:学校の蔵書としては、多いほうですか?

指田先生:中高一貫校の蔵書として5万冊を持っているというのは、多い方だと思いますね。平井くんはOBだから知っていると思うけど、一般的には高校時代に読まないと思われる本も置いている。でも、たぶん大学に行くと背表紙を見たことがあったとか、大学の先生が話題にしたり薦めた本で「ああ、なんか聞いたことがあるな」程度の本は並べているつもりなので、質としては高いんじゃないかと自負しています。

2. 同一書目が一クラス分用意されているものはありますか。

平井:次の質問ですが、同一書目がクラス分用意されている書籍はありますか?同じ本を40冊くらい用意している学校があるらしくて。

指田先生:ああ、そうですね。そういう学校さんがあるのは知っていますが、浅野ではそういうことはしていません。たしかに、調べ学習で同じ本を使うことは結構ありますね。本校の場合は中1の例でここ2年くらいの傾向ですが、班ごとに決められたテーマで調べ学習するのに、まず図書館側が事前にテーマを貰ってきます。そしてこの本が使える、使えないというのを全部見てから、テーマのここは被っているからどっちかを変えてくださいとか、これはこの本があるからできますとか、この本はないので調べられませんと対応しています。この前は、現代語の語尾について調べ学習をしていましたよ。

平井:語尾?

指田先生:たとえば「なんとかじゃん」という語尾の人がいたりするじゃないですか。そういう語尾の変化について調べたいとしたら「どうやって調べよう」となるわけでしょ。だから作家の年齢層ごとに、70代の作家が書く小説と40代の作家が書く小説とで、会話の語尾を比較することだったらできますよと、お答えしました。ほかには「マジ」とか「超」とかの若者言葉の用法を知りたいと言われたのですが、直接そのテーマについて論じている本は出ていないので、現代用語の基礎知識のような本を見てもらったり、「正しい日本語の使い方」「間違いやすい日本語」のような本を使うことで大まかになら調べられるよ調べられるよと、そんなことをお答えしました。

実際に同一書籍で置いていないと調べ学習時に困るのが、修学旅行などの行事系の本です。本校では今、電子書籍を入れているので、図書館にタブレットを置いています。行事系の事前学習をする時期だけ、同時にアクセスできるライセンスを増やして利用できるように契約しています。すると、ひとクラス40人全員そろっての班別行動だから、ひとクラス8班で8個の同時ライセンスが要るということになりますよね。行事前には、だいたい10ライセンスに増やすので、クラスの中で6個から8個のタブレットを使って見てもらえているので、調べ学習に支障はありません。むしろ、紙の本で対応していると、行事が終わった後に、使わなくなった本の処理に困ってしまうからね。

平井:最近は授業に図書の授業が入ってきているんですか?

指田先生:図書の授業はないけど、たとえば国語や社会科だったり、図書館で活動する調べ学習だったり、単純に図書館でアクティビティというのもあります。図書館は教室とは違うレイアウトのスペースだから、自由に移動ができたり、グループワークがしやすいというので使う先生もいます。あとは補欠授業や自習時に図書館を使う生徒のいるクラスがあるので、そうしたクラスには最近はブックトークに行くこともあります。

【※編集部注釈:「補欠授業」・・・部活動の引率などで授業を行う予定の教員が不在の場合の授業】【※編集部注釈:「ブックトーク」・・・あるテーマにそって、何冊かのさまざまなジャンルの本を順序だてて紹介すること。】

3. 座席数、広さ

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1階閲覧席

平井:座席数はどれくらいですか?

指田先生:座席は1階が89席、2階が80席、合わせて169席です。計算上は3クラス同時に全員が座れるんだけど、3クラス同時に入ると全員は座らないので、3クラス同時には動かさないんです。大人しく座ってくれれば、いいんですけどね。

平井:椅子は、そんなにあるんですね。

指田先生:背もたれがついている椅子と、四角い椅子、ハイバック椅子を全部合わせれば、169人は座れる。

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1階自習室

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2階自習室

4. 生徒の図書館利用頻度

平井:学生の利用頻度をお聞きします。月に何冊くらいを借りていますか?

指田先生:先月1月の1か月間で一番借りた生徒は、37冊です。ちなみに中1です。

平井:中1ですか。それはなかなかの逸材ですね。僕は全然借りてなかったです。

指田先生:平井くんの現役時よりも、図書館を利用する生徒は増えています。そういう生徒もいれば、全然借りていない生徒もいるけれど。たぶんあなたが在学していたときよりも、補欠授業を図書館で引き取る回数が増えたので、来ざるを得なくなったのだと思います。週によっては1日8コマぐらい受けるから、ふだん自分からは図書館に来ない、本に興味のない生徒も来るようになりました。図書館に補欠授業で来た帰り際に、書籍を展示していたり教員がブックトークをしたりするから、それをきっかけに本を手に取って借りていく生徒が増えているのかな。1年に1冊しか借りていない生徒もいるけれど、1年を通して0冊という生徒はちょっと減っている印象ですね。全部平均すると1日で37冊出る。単純計算すると、入館してくる生徒が200~300人なので、10人に一人が借りていくか、いかないかという感じかな。データ上は、1日に37冊借りられて、36冊が返却されています。毎日1冊ずつ貸出が増えています。ふだん補欠授業で来る生徒はほぼ借りていくけれども、返せない。利用が多いから、ここまで回るといいかなと思うんです。そんな感じですね。

平井:補欠授業に、図書館のそういう使い方があったんですね。

5. リクエスト本の発注サービス

平井:生徒からリクエストがあった本の発注サービスはありますよね?

指田先生:ありますね。リクエストは紙じゃなく、インターネットで受け付けています。生徒用ウェブがあって、生徒はそれぞれアカウントを持っていて、図書館のパソコンからも自宅パソコンからもアクセスできます。そうやってリクエストされた本の買う買わないを図書館が判断してお返事しています。図書館が判断する期間は、早ければ月に1~2回、遅くても2ヶ月に1回です。図書館ブログにリクエスト本のお返事が出て、本が届いたらリクエストした生徒にお知らせが届く仕組みです。

平井:どのくらいの割合で購入されていますか?

指田先生:小説であれば割と買っていることが多い。ただ全30巻もあるシリーズものだと二の足を踏むし、ライトノベルも電子図書館サービスに角川と電撃が入っているから、そっちのほうがコスト的にも安い。電子図書館で買うというパターンもある。あとは芸能人の手記は買わないとか、極度に偏った本も買わないこともある。漫画はあんまり買わないかな。教員がこの漫画がよいと薦めるものなら買うこともあるけど、生徒からのリクエストでは買わない。

平井:電子図書館サービスが、入っているんですか?

指田先生:今はタブレットで閲覧できるからね。将来的に浅野の携帯の扱いが変わると、またちょっと便利さが上がると思うけど、今の段階では図書館に来て館内のタブレットで閲覧するという制度です。

平井:無料で、出来るんですか?

指田先生:はい、無料で出来ます。一人につき一冊を借りられる感じになっているのね。紙とは別に借りるという状態なので、まずは図書館に来てタブレットを借りて自分のアカウントでログインすると、読んでいた本の続きが読めるという制度ですね。

平井:それは、すごくいい制度ですね。

6. 貸出ベスト

平井:貸出ベスト3の本のタイトルを教えてもらえますか?

指田先生:貸出ベスト3の1位は「カゲロウディズ」。この本は生徒から寄贈された本だよ。自分で買って読んだら面白かったので図書館に入れてくれと持って来る生徒がいて、そういう本は寄贈扱いになる。この「カゲロウディズ」は、今年度で15回も回っている。 2位は、一度飛ばして。3位が「羊と鋼の森」とファンタジー小説の「レイン」。その次に来るのが有川浩の「危険」と住野よるの「また同じ夢を見ていた」。2位に入っているのが「浅野總一郎度胸人生」なんだけれど、今年〈浅野総一郎研究会〉という同好会を新しく作った生徒が一人で14回も借りているので、少し特殊かな。(笑)この学校の創立者について描かれている「浅野總一郎度胸人生が2位になったことにびっくりして、どういう生徒が借りているのかと利用者履歴を見たら、同じ名前が連なっていた。「延滞・継続・継続・延滞・継続・継続」って借りている。(笑)

平井:その研究会は、いったい何人いるんですか?

指田先生:いや、何人かの生徒で浅野総一郎を研究するという同好会っていうか、なんかをやってるみたいですよ。

平井:その生徒は、何年生ですか?

指田先生:中学3年生です。

7.生徒に読んで欲しい本

平井:生徒に読んで欲しい本はどんな本ですか?

指田先生:どう答えたものかと迷うのですが、読んでくれれば何でもいいなと思います。ハウツー本を読んでもいいと思うし、授業で分かんないとか、興味を持ったものを読んでもいいと思う。エッセイを読んだっていいし、マンガを読んだっていい。とにかく何かを読んでほしい。そうしたきっかけになるように、図書の展示をしたり、ブックトークをしたり、先生同士で本を読む仕掛けを作ってみたりしています。なにかしらの本を手に取るきっかけは与える。生徒に聞かれたときは答えるけれど、逆にこの本が面白かったから読めよと薦めるのは、僕としては違うと考えている。薦めたい本はあるけれど、だからといって押し売りはしたくはない。回答にならなくて申し訳ないんだけれど、本を手に取ってもらえるような場を提供したいと、僕は常々考えている。

平井:ではちょっと似た質問ですけれど、指田先生が中高生のときに読んで好きだった本を教えてもらえますか?

指田先生:僕は中学生のとき、推理小説しか読んでなかったね。僕がいた学校には赤川次郎という小説家の著作がたくさんあったんだよ。だから赤川次郎ばっかり読んでいたかなあ。あとはミステリーじゃないけど、宗田理の「ぼくら」シリーズとか中高生が冒険する系は読んでいたかな。やっぱり自分に近いとか、学校が舞台になっている物語は面白く読んだ記憶があります。あとは、電車は得意じゃないんだけど「十津川警部」シリーズは祖父が好きだったから、祖父から借りて簡単に読めた。実際、今の生徒たちには「妖怪アパート」を読んでみたり、「レイン」を読んだり、それは好きに読んでもらえればいいと思う。高校生だったら、僕が個人的に好きな山崎豊子という作家の作品を読んでどろどろした大人の社会を知ってもいいんじゃないかと思う。難しくてもいいからという生徒には勧めたりもしているけどね。

8.先生の一番好きな本

平井:今までのなかで一番好きな本は何ですか?

指田先生:今まで読んだ本のなかで何度も繰り返して読みたい本は、山崎豊子の「大地の子」。ファンタジーなら小野不由美の「十二国記」シリーズ。これは小説としても割と面白いと思って読みますね。皆さんにシェアできるのは、それくらいですかね。あとは弓道系の本を読む。「弓の道」とか「弓道いろは訓」が面白くて読んでいますが、一般的ではないからね。

平井:弓道部だったんですか?

指田先生:そう。今も弓道をやっているからね。

平井:ああ、そうなんですか。

9. 生徒の特徴

平井:指田先生から見て、この学校にはどんな生徒が多いですか?

指田先生:男子校としては大人しいよね。いい意味でも、悪い意味でも、ハメをはずしてバカやる生徒はいない。もっと遊べばいいのにと、思うところがある。だけど、そこが浅野生のいいところであり、もうちょっと突き破ってほしいところでもあるんだ。ただ自分の好きなことにはまっすぐで一生懸命な生徒が多いよね。反面、興味のないことは、やりたがらない傾向は確かにある。男子校で男の子だから、そういう生徒が多いのかもしれないけど、二極的な傾向が強いのかな。イヤなことはイヤと極度な抵抗はしないんだけど、スーっと離れていく感じ。自己主張を強くしないので、そういうところを見逃さないように、図書館としては本をさりげなく出してあげたり、これも面白いんだよって気づかせてあげたりしたいと思っています。

10.図書館案内

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特別展示「この人を見よ」

⬆︎特別展示「この人を見よ」

授業で大きく取り上げる人物ではないが、これから大学・社会人として生きていくうえで、ぜひ知っておいてほしい人物をテーマに、著作や概説書を紹介しています。 第1回はハンナ・アーレント(11・12月) 第2回はミシェル・フーコー(2・3月)】

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「美術選択の生徒が図書館の展示企画とコラボして自主制作した作品」

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