株式会社ファルボ(本社:東京都中央区日本橋、代表取締役:矢野一輝、以下ファルボ)が運営する受験生と保護者の会員サイト「中学図鑑」では、中学受験を経験した2組と現在中学受験を目指している1組の計3組のご家庭に、中学受験にかかる学習費の実情についてインタビューを行いました。 学習塾や家庭学習など受験準備にかかる補助学習費の支出状況、家計に占める割合、入学受験料など教育資金の捻出方法などを年収1,000万円以上の世帯にフォーカスしております。家計に関する答えにくい質問から資金の捻出方法まで、「受験に立ち向かう後輩・同志の少しでも力になれたら」と、包み隠しなく快く対応くださった回答者の方々に感謝申し上げます。
中学受験を検討する際に気になるのはその高額な教育費です。「私立の中高一貫校に通うのなら世帯年収1,000万円は必要」という厳しい声もきかれます。実際に、私立中学に通う家庭の約52%が、世帯年収1,000万円以上という調査結果(平成30年度子供の学習費調査「5世帯の年間収入段階別,項目別経費の金額段階別構成比」文部科学省)※1もあります。 今回は、潤沢な収入があり、塾の「課金システム」に参戦することで受験を有利に進められると言われる家庭(年収1,000万円以上の世帯)と、それ以下の家庭(年収1,000万円以下の世帯)、これら2つの家庭から世帯年収における教育費の割合、そして「補助学習費」のかけ方の違いを明らかにし、世帯年収の格差がもたらす中学受験における教育格差の実態を調査することにしました。 まず【前編】として世帯年収1,000万円以上の家庭の調査報告となります。
※課金システム:昨今人気を博している中学受験を描いた漫画「二月の勝者」に登場する中学受験塾において、通常授業以外のオプション講座等に次から次へとお金をかけることを「課金ゲー」と呼んでおり、学習塾によるそのような講習費徴収システムを意味する。 ※補助学習費:予習・復習・補習などの学校教育に関係する学習をするために支出した経費 (各家庭での学習机や参考書等の購入費,家庭教師,通信添削等の通信教育,学習塾へ通うために支出した学校外で必要となる経費等)。
【調査の背景】 日本の教育は、公的な教育費支出が諸外国と比較してまだまだ不十分であり、子育て費用のうち教育費が家計を圧迫している家庭が少なくありません。この問題が教育格差をもたらし、個々の家庭の教育費捻出の金額差が、選択できる教育の広狭につながるという不平等を生んでいます。このような状況下で、異なる世帯年収の家庭において、中学受験にむけた補助学習費の支出用途、および家計のキャッシュフローにみる、教育費の家計に占める割合や負担の違いなど、世帯年収による学習環境にもたらされる実態調査を実施しました。
「平成29年度(2017年)国民生活基礎調査の概況」によると、「児童のいる世帯(18歳未満の未婚の人がいる世帯)」の 1世帯当たり平均所得金額は743 万6,000 円、中央値(所得を低いものから高いものへと順に並べて2等分する境界値)をとると648万円となっています。 今回の調査対象者である世帯年収1,000万円以上というのは、一般的な子育て世代の世帯年収と比較すると、かなり恵まれた家庭環境での中学受験であることがわかります。
出所:平成29年国民生活基礎調査 / 所得 報告書掲載 / 児童のいる世帯数の相対度数分布-累積度数分布,年次・所得金額階級別(厚生労働省)
子供が私立中学に通うご家庭の約52%が、世帯年収1,000万円以上という調査結果(平成30年度子供の学習費調査「5世帯の年間収入段階別,項目別経費の金額段階別構成比」文部科学省)※1もあるとおり、私立中学校に通うご家庭としてはごく一般的ともいえる世帯年収である3つのご家庭を比較し、中学受験対策のための補助学習費のかけ方や、教育費の増大により家計にもたらされる負担などを明らかにし、今後中学受験を目指すご家庭が、教育費に対する方策を講じる上での一助としたいと思います。
●「気になる学校がある!」と志望校合格を目指し、通塾生活をスタートした5年生
夫婦とも地元の公立中学校への進学を考えていたが、友達が学習塾に通いだし、「自分も行ってみたい」というので体験授業に連れて行くと、子供が気になる学校を発見。子供の中学受験の意思は固く、本格的に子供にあった学習塾を探し始め、今ではお父さんが学習のスケジュール管理、お母さんはプリント整理と子供のよき相談相手として受験勉強を全面サポートすることに。もともと受験を予定していなかったので、受験にかかる高額費用には当惑気味だが、6年生となる来年は高校・大学受験用に用意していた教育資金を前倒しで充当する予定。引き続き、将来の教育資金は投資信託の積立投資で準備中。
●塾通いを始めると、両親の全力サポートで成績がみるみるアップ!見事超難関校に合格
子供が自発的に塾に行きたがり、小3から中学受験を始める。子供の特性や学力に適した、最上位校に強い「SAPIX小学部」へ通塾。メキメキと実力を伸ばし、見事超難関校に合格を果たす。お母さんがスケジュール管理や学習指導など二人三脚で伴走し、お父さんはよきお兄さんとして精神面でフォローアップし、中学受験をバックアップ。今年受験を控えた妹もいるが、別途蓄えていた貯蓄を教育費に充当することで、教育資金の準備もぬかりなし!
●お姉さんの影響で通塾を開始。順調に成績を伸ばし御三家ほかトップ難関校を次々突破!
「四谷大塚」に通塾し、超難関校へ合格したお姉さんの影響もあり、小3の2月(学習塾の小4コースの授業は2月開始)から同じ「四谷大塚」で中学受験をスタート。ちなみにお父さんも「四谷大塚」への通塾経験あり。途中やめたい時期があったものの再奮起して乗り越えると、小5から成績をぐんぐん伸ばし、志望校も射程圏内に。自由な校風と私服への憧れが大きなモチベーションとなり「麻布中学校が第一志望」との気持ちにゆるぎなく、お父さん、お母さんが分担して学習指導やファイル整理を全面サポート。姉弟二人が私立に進んだことで、これから増大する教育費に不安はあるが、学資保険での貯蓄や投資信託での運用等による資産形成を行うとともに、お母さんがパートを始めるなど教育資金をプランニング。現在、貯金の切り崩しもなく家計管理は順調。
株式会社日本政策金融公庫が実施した「教育費負担の実態調査結果」によると、世帯年収600万円以上800万円未満の世帯に占める在学費用の割合は16.8%、世帯年収800万円以上の世帯では12.9%となっています。世帯年収が高くなるほど、教育費の支出は多くなる傾向が見られますが、家計に占める教育費の割合は低くなっています。 今回のSさん、Kさん、Oさんのご家庭を比較してみると、どのご家庭も補助学習費が年々アップし、Kさん、Oさんのご家庭における小6時の補助学習費は、いずれも小4時の約2.3~2.5倍となっています。下表にあるとおり、一般的には年収が低いほど収入に占める教育費の比率が高くなるため、教育費の負担が家計を圧迫する要因であることがうかがえます。 世帯年収1,000万円以上である今回のご家庭をみると、世帯年収がもっとも多く小5の子供をもつSさんの教育費は、6.7%とかなり低く抑えられております。一方、中学受験に取り組んでいたKさんは16.7%、Oさんが19.2%と、下表の一般的な世帯と比較すると高い数字となっています。世帯年収が高くとも、中学受験時の教育費が家計に占める割合が高くなっていることがわかります。しかし、Kさん、Oさんのご家庭は子供が二人おり、かつOさんは受験時に長女が私立中学校に通学されていたということを考えると、19.2%というのは決して高い比率ではないようです。そこには受験時の教育費を、他のご家庭と較べて低く抑えられた要因があります。その点はインタビューにおいて詳しくお聞きしておりますのでご参照ください。
子供が突然「中学受験をしたい!」と決めたとき、教育資金を確保するために、親は相応の準備をしなければなりません。今回のご家庭は一般的な子育て世代の年収を大きく上回り、かつ潤沢な貯蓄がありますが、中学受験を目指すご家庭のヒントになるような、教育費との上手な付き合い方についてインタビューすることができました。3年間にわたる高額な中学受験費用の捻出方法や、家計のバランスを保つために心がけたことなど、世帯年収の枠にとらわれず非常に示唆に富んだ内容となっています。
出所:日本政策金融公庫/令和2年度「教育費負担の実態調査結果」(令和2年10月30日発表) ※在学費用は学校教育費(授業料、通学費、教科書・教材費など)と家庭教育費(学習・家庭教師の月謝、通信教育費、参考書等の購入費、おけいこごとの費用など)
世帯年収は約1,800万円、貯蓄は確定拠出型年金・投資も含めて約3,200万円です。夫は大学院卒、妻は大学卒ですが、二人とも地方出身で中学受験の経験はありません。
世帯年収は約1,135万円、貯蓄は学資保険での貯蓄も含めて約1,000万円です。夫妻ともに大学卒ですが、二人とも中学受験の経験はありません。
世帯年収は約1,000万円、貯蓄は学資保険での貯蓄も含めて約1,500万円です。夫妻ともに大学卒です。お父さんは四谷大塚に通塾の経験もあり(途中で退塾)、国立中学を一校だけ受験しましたが、入試前の抽選にはずれてしまったので公立中学校に進学しました。
【学習塾】 春期講習受講後、少し間をあけて小4の5月に正式に入塾しました。現在は週3回、電車または徒歩(約15分)の距離にある「SAPIX小学部」に通塾(2020年4月~5月を除き対面授業)しており、お弁当は持参していません。小4はサマーキャンプに参加したため夏期講習は受講していません。
【通信教育】 新型コロナによる緊急事態宣言を機に、「スタディサプリ」と「学研のKimini英会話」のオンライン学習をスタートしました。
【そのほかの習い事】 スイミング教室に週一回通っており現在も継続中です。小4まではスイミング・習字・プログラミングに通っていました。また、夏はサマーキャンプで自然体験、冬はスキー教室やスケート教室にも行かせていました。国立天文台、日本科学未来館、科学技術館の科学系ワークショップや民間の体験教室にも参加するなど、子供の興味に応じて単発体験型の教室にも参加させています。
【家庭学習】 自宅での学習は自分の部屋で行っています。これまでリビングで学習していましたが、新型コロナの影響で両親が在宅でのリモートワークになったので、娘の申し出により集中できる自室へ移りました。 平日は、登校前に算数の基礎力トレーニングや漢字など、塾の課題を30分ほど取り組んでいます。学校の宿題は通塾前に終わらせるようにしており、夜は遅くとも22時~22時半の間に寝るようにしています。 休日は、7時間位勉強していますが、時にはテスト後のご褒美デーをもうけて遊んだり、家族でキャンプや登山(1回/月)にでかけたりと、メリハリをつけた学習への取り組みを心がけています。
【学習塾】 小4から週2回、電車で3駅ほど離れた場所にある「SAPIX小学部」に通塾(対面授業)しており、お弁当は持参しませんでした。 小5から週3回になり、小6では平日2回、土日には特訓講座に通い、かなり長い時間を塾で過ごすことになりました。(日曜のみお弁当を持参しました)
【家庭教師】 小6の11月~1月の3カ月のみ「プロ家庭教師の中学受験家庭教師ドクター」のスーパードクターコースを受講(対面授業とオンラインの併用)しました。入試傾向が、処理能力重視/思考・記述力重視/処理能力・思考・記述力重視とそれぞれ異なる男子校3校を受験するにあたって、いずれの入試タイプにも対応できるようにと、算数を補強する目的でした。また、これまで勉強を教えてきたのはお母さんですが、男子の超難関校レベルの算数を教えるのは難しくなったということもあります。なによりも子供本人の希望もあり、算数と理科を家庭教師にお願いすることにしましたが、結果確実に理解度が向上し、非常に効果的に受験最後の追い上げができました。
【そのほかの習い事】 週1回サッカーをやっていました。
【家庭学習】 自宅での学習はリビングで行っています。 平日は、小6の時に週2回通塾していましたが、1回の授業時間も長く、また土曜日は「土曜志望校別特訓」、日曜日は「難関校SS特訓(サンデー・サピックス)」などの特訓講座があるため、これらの講座の復習で平日のスケジュールは埋まっていました。もともとテレビを観ない家庭だったので、受験時はリビング学習でも集中して取り組むことができました。
【学習塾】 小4から週2回、電車で1駅離れた場所にある「四谷大塚」に通塾(対面授業)しており、小5になると週3回、小6では週4回通っていました。小6の時には「四谷大塚」以外に、志望校対策として「早稲田アカデミー」の「NN志望校別コース・麻布クラス」へ入塾します。幸い前後期ともに授業料が全額免除となるA特待生の資格を得ることができ、無料で日曜特訓講座を受講することができました(後期の一カ月目は特待生の資格を得る前だったので、一科目のみ受講し添削のための受講料を支払いました)。ただし、学校別対策としては「四谷大塚」の「学校別対策コース」の授業に参加し、「早稲田アカデミー」では授業を受けずに、詳細な解説が記載された教材と添削だけをお願いしました。ダブルスクールとなりましたが、特待生になれたおかげで重課金は免れました。双方の学習塾のよいとこ取りで、環境変化を最小限に抑え体力を温存しながら効率的に学習を進めることができました。
【通信教育】 お姉さんの受験時に購読していた「朝日小学生新聞」は日刊紙でしたが、無理に毎日読ませようとすると強制になってしまため「朝日中高生新聞」(週刊)に変更し、あくまで子供の自主性に任せ、気軽に読み進められるように気を配りました。志望校の社会に記述問題が多い場合、特定のテーマに対する自分の考えや意見をもてるようにする対策が必要です。そのための準備に新聞の利用はおすすめです。
【そのほかの習い事】 小5のときにテニスをやっていましたが、小6の前期で習い事をやめました。
【家庭学習】 自宅での学習は、自分の部屋ではありませんが個室で行っています。 平日、塾のない日は「予習シリーズ」の要点チェック・練習問題・応用問題などを4~5時間ほどやっていました。塾のある日は、学校の宿題を済ませてから塾に向かうようにしましたが、時々忘れて翌朝になることもありました。塾では17時~21時まで学習してくるので、自宅では算数の計算問題に取り組んだあと、23時半には寝るように心がけました。学年があがるごとに、その時間にやるべきことを自分で決め、、集中して学習に取り組んでいました。週末の学習時間は、8時間ほどだったと思います。 休憩時間はスマホゲーム、Nintendo Switch、マインクラフトなどをして過ごしていたようですが、時間の管理もしっかりできており、要領よくスケジュールどおりに進められていたと思います。 家族で登山に行くことも多く、勉強以外の時間も大切にしていました。夏は海、冬はスキーへと季節ごとのアウトドアを楽しみ、旅行の頻度は高かったと思います。
学習のメインサポーターはお父さん。ただ勉強を教えるのは、もっぱら塾にお任せしています。基本的に演習問題等の丸つけは解説をみながら自分で行うように指示しているが、国語の記述問題など、子供では答え合わせが難しいときにはお父さんの出番です。 サピックスの学習管理については、子供一人でやらせるのは無理だと思うので、親がプリント整理を行っています。また、お父さんが週末に子供と「補強すべきポイント」や「消化すべき課題」などを相談して、「翌週にやるべき学習内容」と「学習予定時間を記入した学習計画表」をエクセルで作成して子供に渡すことにしています。子供はやるべきことの優先順位を決めて「選択」と「集中」をモットーに、勉強と遊びのメリハリをしっかりつけて取り組むようにしています。 ただし、睡眠第一! たとえ予定の学習スケジュールが終わっていなくても、睡眠を削ってまで学習時間を延長するようなことはないようにしています。
【Sさんの学習予定表】
学習面でのサポートはお母さん。お母さんが学習指導と進捗管理を行い、受験伴走を完遂しました。学習塾での学習の総復習や、苦手な問題を教えたり補習するのもお母さんの役目なら、受験必須単元や予想問題等の情報収集もお母さん。パート勤務のかたわら、受験勉強のタイムマネジメントを行い、学習塾の先生もフル活用しながら学習管理を完璧にこなしていました。お母さんの努力が志望校合格の成功要因だと思います。そして、お父さんはもっぱらメンタル面でのサポートに徹し、お母さんと子供の潤滑油として、二人と妹を陰で支えよい距離感を保ちながらフォローするよう心がけました。
学習面でのサポートリーダーはお父さんでしたが、国語・算数・社会はお父さん、理科はお母さんの担当とし、二人で分担して教えていました。特に天体、生物、滑車など中学受験頻出の重要な単元は親がしっかりサポートし、理解の定着を心がけました。得意科目である算数の学習指導は5年生までで、それ以降は自分で解答・解説をみて独自に進めていきました。 お父さんが仕事で忙しいときには、LINEでお母さんに指示を出してバトンタッチすることもありましたが、お姉さんの中学受験で培ったノウハウをさらにブラッシュアップして、三人四脚で中学受験に取り組みました。特にファイル整理は、お父さんがメインで行っていましたが、お母さんのヘルプをお願いすることもありました。 学習スケジュールは、毎週月曜日にやるべきことをリストアップして、一週間の予定を子供本人にノートに書かせるようにしました。進捗管理はお父さんが行い、予定どおりに進められないときには優先度をつけて、予備時間で調整するなどしてスケジュール組みを行いました。 また、一緒にお風呂に入り10~20分程度ですが、父子二人の会話の時間を持つようにしました。些細なできごとがメンタルに影響を及ぼすので、小学校での出来事を意識して引き出すようにしていました。またお母さんは、子供が頑張りすぎるときや、お父さんに怒られたときにリラックスするような声かけをしたり、体調面・食事面などのケアを行いました。メンタル面でのサポートは、お父さんとお母さんそれぞれが適度な距離を保ちつつ、夫婦で協力して行いました。
●教育資金の準備に不安を感じますが、準備はしてあります 6年時の受験準備に必要な高額な学習費用等については、将来の教育資金のためにと用意しておいたお金を充当する予定なので、教育費の確保はできていますが、必要金額をリサーチするたびにその金額の大きさに実感がわかず、その現実を受け入れる覚悟を持てずにいます(笑)。
●教育費の家計への負担は重いので、旅行の頻度を減らして節約につとめ、投資でお金を増やしています 家族で旅行に行く回数を減らすなどして節約していますが、それだけでは教育資金を増やすことはできないので、プラスアルファとして株式や投資信託にチャレンジしています。「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」という制度を活用し、投資信託を積立しながら購入することで、将来の運用利益が教育資金のプラスになることを期待しています。
●中学受験には想定以上にお金がかかったが、十分な貯蓄があったので乗り切れました 特に6年時はオプション講座の受講や家庭教師などで、かなりの資金を教育費に投入することになりましたが、振り返ると要所要所で効果的にお金を使うことで子供の学力はそれに応える形で上昇したので、戦略どおりの中学受験を実践できたと思います。これから妹の中学受験も控えていますが、必要な金額も心得ていますし、学資保険などの貯蓄もあるので将来的な不安は感じておりません。
●教育費はそれほど家計の負担とは感じていないが、無駄な消費を省きお得な買い物を心掛けています 日常生活では、自分のライフスタイルにあった航空系クレジットカードを有効活用しています。陸マイラー(買い物や「ポイントサイト」等の活用でマイルをためる人)におすすめのSuicaのついたカードを利用することで、効率よくマイルをためることができ、たまったマイルを電子マネーや無料クーポン、商品券等の特典に交換しています。こういったポイントをためてお得に買い物をするようにしており、それが節約につながっています。節約というよりは、それが本当に必要なものなのかを子供に今一度確認し、吟味することで無駄な買い物をしない心がけが大事です。 受験時以外は、季節ごとに自家用車で長野の実家を訪れたりもしましたが、子供たちもお金のかからない趣味(サッカー・テニス・将棋)を持ち、基本的に家計を圧迫する費用というのはありません。
●二人分の大学までの教育費を考えると不安なので、高額な出費を控えたいと思います 中学受験は予定していませんでしたが、先にお姉さんが中学受験をすることになり、ある程度受験準備に必要な金額を理解していました。投資信託や学資保険などで教育資金を確保していたので、貯金を切り崩すことなく受験費用を捻出することができました。しかし、教育費が増大するのはこれからなので、二人分の大学の学費まで考えると、将来の教育資金に不安を感じます。旅行を減らすなど多額の支出を控えるようにして、今後の教育費の支出を念頭に家計を維持していこうと思います。
●貯蓄を増やすために、投資信託や株式などで教育資金プランニングをしています 将来に向けた貯蓄を意識して、「NISA(少額投資非課税制度)」を活用し投資信託の運用や少額株式取引などを行うことで、今後増えていく教育費に備えています。また、お母さんが中学受験終了後にパート勤務を始めたので、その収入をお姉さんの学習塾の費用にあてています。さらに、「メルカリ」などのフリマを利用して売買することや、近所の友人からおさがりをいただいたりすることが、節約につながっています。
【食費】 新型コロナの影響もあり、外食はしていません。外食費として計上されている金額は、総菜屋やレストランからテイクアウトした食事の費用になります。共働きのため、食事の支度をできないこともあり、スーパーでの買い物は刺身やお総菜などすぐに食べられるもの調達して食事を済ませることが多くなっています。UberEATSも月に2~3回程度利用しています。 【被服費】 新型コロナの影響もあり、衣類はアマゾン、楽天、ベルメゾンといったオンラインショップで購入することが多いです。2~3カ月に1回程度の割合で季節ごとに購入する場合もあれば、サイズアウトしてしまったときに必要に応じて購入しています。
【食費】 外食は月に一度くらいします。宅配サービスなどを利用することもなく、近所のスーパーで買い物をして基本的にお母さんが食事を作っています。子供の中学校には学食があるので、午後部活があるときや土曜日などに利用しています。 【被服費】 人づきあいのよいお母さんのママ友ネットワークのおかげで、一人っ子の家庭から衣類をいただくことが多く、あまり購入の必要がありません(都会で中学受験をする家庭は一人っ子が多く、またよいブランドの衣服を購入されているようです)。わが家では子供の衣類に高額な費用はかけていません。また無駄・無理な買い物をせずに、本当に必要なものを選別して購入するようにしています。
【食費】 模擬試験の後に、時々外で昼食をとることがありましたが、外食はほとんどしません。食材の買い物は近場のスーパーで済ませていますが、過去には、生協などの宅配サービスを利用したこともあります。 【被服費】 衣類の出費はそれほど多くありませんでした。普段はユニクロ、GU、ZARAなどのファストファッションのお店を利用しています。
株式会社ファルボでは2020年8月に、中学図鑑会員の世帯年収を「400万円」、「600万円」、「800万円以上」の3つに分類して、学校外で必要となる塾等の「補助学習費」の独自調査を行いました。 ※詳細な調査報告はこちらの「中学受験にかかる費用」実態調査レポートをご覧ください。
下記の表11はその時の調査結果で、今回インタビューを行った3家庭と同様の「世帯年収800万円以上」のご家庭における「補助学習費」を示しています。下段は、3家庭のうち、すでに中学受験を終了した2家庭の「補助学習費」となっております。 表12は中学受験を目指す、私立受験コースの小6学習塾費を調査結果をモデルケースとし、今回インタビューを行ったご家庭と比較した表になります。
(出所)「小中学生の保護者の教育費負担に関する調査」(株式会社ファルボ調べ 2020年8月)
※学習塾は集団学習塾の入会金・授業料・教材費・施設費・季節講習料・特別講習料・交通費・家庭学習教材費等 ※家庭教師は入会金・授業料(4年生:週1・1時間 5・6年生:週1・2時間)・交通費等 ※通信教育は入会金・受講料・購読費等
調査結果の表11は、学習塾・家庭教師・通信教育のすべてを利用した場合をモデルケースとして掲出していますが、今回ご紹介した世帯年収1,000万円以上のご家庭の「補助学習費」と比較してみると、「補助学習費」全体の合計はいずれのご家庭もモデルケースを下回る結果となっております。これは、下記にあるとおり各家庭が、学習塾・家庭教師・通信教育をフル活用するのではなく、子供の学習状況により時期ごとに必要な学習ツールを効果的に選別して利用している結果だと思います。
まだ小5のため、中学受験に向けた「補助学習費」の全容が明示されていませんが、現時点で都立の中高一貫校を志望されているため、ほかの家庭とは異なった支出傾向が見られます。学習塾の費用は通常授業と基本的な季節講習にとどめ、通信教育によるオンライン英会話やリーズナブルな映像教材を活用しています。また、都立中学の適正検査に求められる広い視野や日常的な観察眼を磨くため、体験型学習やプログラミングなどへ積極的に参加するなど、小6時の受験勉強を有利に進めるための工夫がみられます。私立・都立いずれの学校も対応した受験準備が進められています。
お母さんとの二人三脚による綿密な学習管理が功を奏し、成績をアップさせるための戦略的な情報収集、および学習塾と家庭学習による集中的かつ効率的な取り組みが費用を抑える結果となっています。学習費アップが懸念される家庭教師ですが、小6の入試直前の3カ月のみ最終的な補強と理解度アップのために家庭教師を活用されています。必要な時期と目的を明確に定めることで、最小限の投資で最大限の成果をあげられました。
表12の学習塾費の内訳をみると、通常通っている学習塾以外の学習塾にて志望校別コースを受講しています。まさに、冒頭で述べた潤沢な教育資金を「課金ゲー」に投入する高収入世帯ならではの受験戦略のようですが、ほかの受験生と比較しても学習塾費が高騰していないのには理由があります。通塾校以外の塾で、外部生も受講可能な志望校別コースを特待生制度の恩恵を被り無料にて受講しているからです。特待生の資格を得られたことで、通塾校以外での特別講習を全教科併用するという堅実な選択が、無駄な出費を抑えることにつながっているようです。 経済的にゆとりのある世帯にとって、必ずしも特待生制度の獲得が受講の選択を左右するものではないと思いますが、学力的にも経済的にも高パフォーマンスを発揮する特待生は合格へのパスポートを一歩たぐりよせる精神的余裕をもたらしたのではないでしょうか。
いずれの家庭も中学受験の準備を開始する小4と小6を比較すると、その金額には2倍以上の開きがあります(表11)。小4での学習塾にかかる費用は通常の授業料と、春・夏・冬の季節講習料のみですが、小6になるとこれに様々な特別講習費が追加されます。基本的には特別講習の受講は任意とされていますが、Kさん、Oさんのご家庭のような超難関校をめざす生徒は、みなさん「志望校別の特別講習」を受講するのが一般的です。つまり、中学受験に際し入塾時の小4の授業料の多寡を比較するのではなく、小5、小6の授業料、そして授業料には何が含まれているかを精査すること、さらに季節講習や特別講習の費用をリサーチしてトータルの金額を把握した上で、わが家の家計が中学受験に挑戦できるのかを検討する必要がありそうです。
児童のいる一般的な世帯と比較すると「世帯年収1,000万円」というのは、十分高収入であり、節約などしなくても余裕をもって中学受験に臨めるだろうと考える人も多いでしょう。しかし、今回のKさん、Oさんのようにご主人の年収が1,000万円の場合、その手取り金額はおよそ736万円程度となります。また、ある所得を超えると児童手当や小児医療費助成制度の所得制限の対象となるので、公的な収入源が減り年収に対する金銭的な負担割合が大きく変化するのが「年収1,000万円」といわれています。
そのような状況下にある3つのご家庭ですが、教育費を捻出するためのいくつかの共通点がみられました。
積極的な家計の見直しを図り、確定拠出型年金への加入や株式投資を行うなど、教育資金捻出のための準備を、中学受験が始める前にスタートさせています。また、お金の使い方や節約方法はそれぞれの家庭に工夫があり、どの家庭も中学受験に必要な資金が、あらかじめきちんと貯蓄されていました。こういった早い時期からのプランニングが、一時に多額の負担を強いる中学受験においても家計をひっ迫することなく、時には貯蓄でカバーしながら教育費に集中することができたのでしょう。
いずれの家庭も、片方の親のみが中学受験に携わるのでは、お父さん、お母さんのそれぞれが得意な教科、得意な分野を分担してサポートしているのが印象的でした。特に学習管理の面では、親と子供がしっかりコミュニケーションをとりながら緻密な学習計画を組み、予実管理を行うことで進捗状況を把握し、目標に向けて漏れのない対策が行われていました。また、親子の会話の時間を確保するなど、メンタル面でのサポートもぬかりなく、子供がいかにモチベーションをあげて勉強に取り組めるかの環境づくりに配慮されています。
小4から始まる中学受験ですが、受験勉強一辺倒ではなく登山・海水浴・スキーなどアウトドアを楽しむ、仲睦まじい家族の姿がうかがえました。学習の合い間にゲームもやりますが、年に何回かは家族旅行の時間をもち、受験以外の環境に身をおく時間も大切にしています。3年間にわたる長期の受験勉強を継続させる秘訣は、こうしたメリハリのあるライフスタイルにあるのだと感じました。
同じ年収でも教育にかけられるお金の多寡は、それぞれの家族構成やライフスタイルによっても異なります。一概に世帯年収1,000万円だからといって、どの家庭も学習塾・家庭教師・通信教育をフル活用し、私立中学校をめざした受験準備ができるわけではありません。また、世帯年収600万円ということで必ずしも私立中学校への進学が夢物語に終わるいうことでもありません。たしかに、教育費にお金がかけられるご家庭は、同じように中学受験を目指す子供の集まる充実した環境(学習塾等)で、受験スキルを習得し、有益な情報を得ることで有利に受験戦争を戦えるかもしれません。しかし、本人のモチベーション、本当に自分に適した効率的な学習、両親の積極的なサポートというのはお金で買えるものではありません。潤沢な教育費を投資できることが、必ずしも受験生にとって理想的な親とはいえません。今回のご家庭は、いずれもお金を出して学習塾に任せっきりにするのではなく、親子で最適な学習方法を模索し、夫婦そろって積極的に子供の受験をサポートする姿勢がうかがえました。そのことが、世帯年収でははかることのできない、中学受験の最強の武器であるような気がしました。
わが家は中学受験が可能なのかどうかを年収で判断するのではなく、お金で解決できない部分を親がしっかりサポートできるのか、また中学受験だけではなく大学までの教育費を家計から捻出できるのかを見極めることが大切です。節目節目には貯蓄や保険で補いながら、限られた教育資金の有効な活用方法を各家庭で検討し、進路を決めてほしいと思います。
みなさんのご家庭では中学受験を目指す上で、どのような教育資金プランニングをお考えでしょうか。ぜひ、教育費捻出のための工夫やお考えについてのコメントをお寄せください。 中学受験に対する率直なご意見など、みなさんの「声」をお聞かせいただき、同じ悩みをもつ受験生のお父さん・お母さんが情報交換ができる場にしたいと思っています。
ファルボでは、各家庭の経済状況に合わせた受験対策を応援する、学習プラットフォームの構築を進めております。塾に行かなくても自宅での家庭学習を自分で進められる学習管理ツールをはじめ、中学受験において子供一人ひとりの個性にあった学校選びを支援するさまざまなコンテンツによる情報提供を行っています。また、中学受験を目指す家庭に役立つ情報・サービスを展開していく予定です。
≪参照資料≫ ・平成30年度子供の学習費調査(文部科学省) ・平成29年度(2017年)国民生活基礎調査の概況(厚生労働省) ・令和2年度(2020年)教育費負担の実態調査結果(日本政策金融公庫
※1【(学校種別)世帯の年間収入段階別構成比】
≪調査概要 (自社調べ) ≫ ・調査タイトル:小中学生の保護者の教育費負担に関する調査 ・調査対象:「中学図鑑」の会員の保護者 ・調査期間:2020年8月1日~8月31日 ・調査方法:インターネット調査(地域:首都圏) ・有効回答数:410サンプル(内訳)父親131名 母親279名
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