一体、ドルトン東京学園とはどのような学校なのでしょうか。前身は目黒にあった中高一貫校「東京学園」です。商業学校として伝統ある東京学園を河合塾が買収し、学校法人河合塾学園がドルトンプランを実践する新たな学校を設立することになりました。
日本初のドルトンプランに基づく中高一貫校となります。2018年5月に完成したばかりの校舎は機能美に溢れていて、多くの受験生をトリコにすることでしょう(曇天で残念です)。校舎内の様子については後半で触れていきます。立地は高級住宅街が広がる成城学園前駅からバスで数分。スクールバス運行の予定は今後もないようです。
ドルトンプランはおよそ100年前にアメリカで生まれた教育メソッドの一つ。詰め込み型学習への問題意識から誕生した学習者中心のメソッドで「教える」と「学ぶ」のバランスを大切にしながら、子どもたち一人ひとりが自分の学びたいことを、自分にあったやり方で学んでいくというものです。
自由・協働という理念を中心におきながら、ハウス・アサインメント・ラボラトリーという考え方を教育の軸として展開されます。主体性・探究心・創造性を育みながら、社会性や協調性・思いやりを大切にしていくことで、人とのつながりの中で力強く生き抜く子どもたちを育てていくというコンセプトです。
発祥はアメリカですが、全世界で高く評価されているメソッドであり、ヨーロッパやアジアで近年特に熱が高まっています。詳細はドルトン東京学園のホームページをご覧ください。
「好きなことを、好きなだけ、好きなように勉強する」というのがドルトン東京学園の理念です。
少し具体的に触れていきましょう。ドルトンプランに基づく学習者中心の教育を実践するための仕組みと環境、そして教職員のサポートがある学校です。生徒同士、生徒と教員、教員同士の自由闊達なコミュニケーションが自然発生するように校舎が設計され、カリキュラムを組んでいます。
魅惑の校舎に目を奪われますが、最大の魅力は少人数制指導かもしれません。1学年100人で25名1クラス。小回りが利く学校で、きめ細やかに関わりを深めながら教育活動が行われます。ドルトンプランは、ああしなければならない、こうしなければならないという決まりがあるわけではありません。生徒や先生が一緒になって課題を設け、考え、解決策を導いていくという思考型の授業・教育です。これを高レベルで実践していく上でも、少人数制は譲れません。校舎のキャパシティ、教育の質を考慮すると募集人数を今後も無闇に増やしていくことはないでしょう。
グローバル教育については、異文化や多文化の体験をする機会が多く作られます。海外に行くことだけがグローバルではなく、国内でも在日外国人のコミュニティや大使館訪問などを通してグローバルな視野を養っていくようです。
もちろん海外へ行くこともあり、中2の終わりにオーストラリアホームステイ、高1の終わりにアジア海外研修を予定しているとのこと。異文化に触れ、グローバルを体感することで、世界への興味を自然に促していく環境が整っています。
教科横断・総合型のプロジェクト学習にも力を入れていきます。各学年のある時期に一つのテーマを設けて、そのテーマについて全教科横断型の学習を実施していくことも企画されています。例えば、人口・食糧問題について中2の6月に英語・国語・社会・理科・家庭科・情報の科目でそれぞれ探究型の学習を実施することで、横断的に考えて視野を広げていきます。
現在は、全国に募集をかけて教員を集めている段階です。ドルトンプランへの理解があって、教育方針に賛同いただける熱い先生が続々と集結しているとのこと。河合塾ブランドからしても、変な先生をあてがうわけにはいかないですよね。おそらくかなり質の高い教員を揃えてくるのではないでしょうか。登壇された先生、学校案内をしてくださった先生はいずれも、懐が深く頭もキレる印象。この先生たちが学校をどう進化させていくのか、楽しみになるような方々でした。
ちなみに現時点では校長先生がまだ決まっていないようです。設立認可申請は河合塾の理事長を暫定的に校長ということにして出しているようですが、現在の先生の中から任命するか、外部から招聘するかはお伝えできないとのこと。こちらも楽しみです。
部活動については、現在鋭意検討中。今のところ運動部は剣道、バドミントン、サッカーまたはフットサル部。文化部は美術、合唱、華道、茶道部を作る予定とのことです。少し寂しい数ですが、これから生徒たちの熱意に応じて部を設けていくのでしょう。
また、あたたかく落ち着いた雰囲気のカフェテリアは生徒たちにとっての憩いの場となりそうです。ただ、食事の提供は予算の兼ね合いや運営の都合上、生徒数がある程度揃った3年後つまり第1期生が高校1年生になるタイミングでスタートするとのこと。当面はお弁当持参ということになります。
学費は初年度1,480,000円(入学金400,000円)、中2・中3は1,080,000円とのこと。高いか安いかで言えば、高いですね間違いなく。学費が高い私立で有名なのが慶応SFC(1,155,000円)、法政第二中(1,021,150円)、公文国際(915,600円)ですが、それに匹敵する費用がかかります。
訪問すれば分かりますが、この設備なら納得という方が多いはずです。さらに少人数制学習、ドルトンプランの教育が受けられることを考えれば決して高すぎるということはありません。
さて、気になる入学生のレベルですが、これは各塾がどのレベルを想定するかで上下してしまいます。学校側の想定はあくまで謙虚に日能研や四谷大塚偏差値で45〜50くらいとのこと。謙虚すぎますね。それはさすがにないかな、と感じています。
数年内に新設校定番の偏差値インフレが起きて60には到達することでしょう。共学、国際、新校舎と人気が出る要素はバッチリ持っています。そもそもバックは河合塾です。大学入試の結果を見るまでもなく、絶対に強いことは請け合いです。
個人的にライバルは期待を込めて広尾学園。初年度から数年間は三田国際が実質ベンチマークとなるでしょう。学校への注目度はすでに高いので、広報担当の方の発信力、校長先生の魅力等が相乗的に評価を高めていった場合は、渋谷教育学園渋谷に挑戦権を得るような存在になるかもしれません。募集定員も少ないですしね。
入試問題は現在のところ詳細を詰めている段階。8/18以降に要項及びサンプル問題を公開する予定とのこと。これは必見ですね。今回、学習のヒントとして入試担当の先生がおっしゃっていたのは、「日頃から身の回りに起こっていることに興味を持ってよく観察すること。社会的なもの科学的な出来事の原因をよく考えること。自分の考えを言葉で表現するという習慣を持つこと」でした。
このヒントから考えられるのは、思考力系の問題が多く、記述問題も出題されるということです。暫定の入試要項を見ても思考力型、英語型、プラス型と特色ある入試が準備されています。したがって、通常の2科・4科入試は比較的ベーシックなものになるのではないでしょうか。
募集人数は男女合わせて100名。およそ半々になるようにしたいものの詳細は未定とのことです。
一般入試の予定は下記の通り
日程は2/1、2/2で午前午後の四日程。ブルーオーシャンである2/4PMは三田国際にぶつけてきました。改革に成功して勢いのある三田国際とガチンコ勝負となりそうです。入試形式では、思考力入試・プラス型入試・英語入試と目新しい入試を三つ。まさに多様性を持った人材を集めるという学校の理念を体現する入試日程・制度となっています。
そもそも大学進学実績を目的としていない学校ですが、塾屋や保護者の悲しい性としてどうしても進学実績を気にしてしまうところがありますよね。学校は全員がMARCH以上に入れるようなレベルは担保したいというお話でした。生徒が一人もいないのにそう言わせてしまうところは何だか悲しくなりますが。
カリキュラムや学校説明を聞いても、大学入試改革(新しい学力観)を相当意識しているということは分かりますし、河合塾のバックアップを受けた学校がそうそう失敗はできません。そもそも「ハーバードに入れる」という文句もどこかで謳っていたような学校です。海外大学進学のサポートも充実させていくということは熱を入れておっしゃっていました。多様な進路を実現していただきたいですね。
それでは、校舎設備について写真とともにお伝えしていきます。
普通教室です。一教室25名ですので、コンパクト。机も移動が楽なタイプで椅子はメッシュで快適。教室は壁三面がホワイトボード。先生だけでなく、生徒たちの使い勝手も良さそうです
四角い教室の中では出てこないような発想を生み出すような丸い部屋もある。壁面全部ホワイトボード。丸いものもたくさん。さしずめクリエイティブルーム
図書館は二階と三階に分かれている。図書館の壁は透明で入口出口に壁はない。いつでも気軽に入れるスペースに。蔵書の数は15,000くらいを予定。稼働率の高い本を入れていく。入れ替えも頻繁に
体育館には簡単なギャラリーも。体育はやるものだけでなく見るものでもある。天井も高い。バスケコート二面分
職員室も中が見通せる仕様に。机の配置がフリーアドレス風で斬新。風通しの良い職員室になりそう
制服ではない、標準服。スカートとスラックスを基準として自分でコーディネートが可能。カバンもoutdoor風でおしゃれ。そして、なんとアディダスの体操服。どこぞのサッカーチームのトレーニングウェアのようだ
創り上げたい学校像から逆算して設計された校舎の機能美は他の追随を許さない唯一性を感じました。校舎を改築することではなし得ない強烈なコンセプトが校舎設計や理念の構築から窺えました。
新設校として評価が定まりにくく、様子見の一年目となることは容易に想定されます。一年目が一番のチャンスであることは間違いありません。ただ校舎の華々しい魅力、ドルトンプランの可能性、河合塾バック、個性と熱意ある先生方がいることを考慮すると、初年度から人気が爆発することも十分にありえます。
試験的な学校なのでなんでも出来ると思います。塾や保護者の圧力に負けて無難な学校に収まってしまうことが一番の懸念。ぜひとも大手塾のアドバイス(偉そうに意見するんですよ、私立に対して塾が…)やモンスターペアレンツに耳を貸さずに、独自の教育メソッドを追究してはっきりと色を出す学校であって欲しいです。
「自分たちで学校を作っていく」という気概を持った第1期生が集まれば、ドルトンプランの実践も含めてきっとこの学校の立ち上げは大成功となることでしょう。ぜひ、パイオニアスピリッツを持った小学生にドルトン東京学園の門を叩いていただきたいと思います。
およそ二時間弱の訪問の間ずっとワクワクしっぱなしでした。この学校がもつパワーや無限の可能性に刺激され、久しぶりに大変有意義な学校訪問となりました。校舎とコンセプトを体現する生徒と先生が集まれば、すごいことになりそうです。ご興味がある方は、6月〜8月で学校見学会と授業体験の企画がありますので、一度訪れてみてください。一気にハートを掴まれることでしょう。
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