説明文・論説文の解き方のコツ

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指導

長らく国語の受験指導に携わってきた経験から、「苦手」という人の多い説明的文章(説明文・論説文)の読解について、効果のある読み方・解き方・秘訣を公開いたします。読み方のポイントをマスター出来れば、各都道府県の公立高校の問題をはじめ、難関中学入試から大学入試センター試験(現行)まで対応可能です。

コツを掴んで文章を精読できるようになれば、「国語が苦手」「本は読まない」「説明文嫌い」という方も安心です。国語の得点力が上がり、少なくとも足を引っ張ることがなくなり、人によっては得点源となることもあります。ただし、事前に注意点を記しておくと、絶対に「すぐには」効果は出てきません。この方法を試しながら「最低20題」出来れば「50題以上」、説明的文章を解いてください。少し難しめで自分の語彙レベルより上の文章だと、さらに効果があります。元から自分が理解できそうな問題を精読しても意味がありません。

説明的文章の解き方・読み方9つのポイント

基本の考え方

まずは、基本の考え方をお伝えします。これからポイントとして挙げることは二つの点で効果があります。一つは、文章全体を「読む」ことで理解し、要約をする助けになると言う点。もう一つは、読解問題を「解く」時にヒントになることが圧倒的に多く正解に結びつきやすくなる点です。どこにヒントがあるのかを掴めていれば、読書量が少なくても解ける力がついてきます。

そのため、ポイントとして挙げたことには線を引きながら(マーキングしながら)読むと良いでしょう。後から振り返る時にも試験の最中に読み直す時にも効果的です。ちなみに私は仕事柄年間700題ほど説明的文章を解きますが、それでもマーキングをしながら読みます。何が言いたいかというと、それだけ解いている私でもマークをしながら解くわけですから、皆さんもぜひマーキングをしながら読んでいただきたいということです。

特にこの記事をご覧いただいている方は、「説明的文章が苦手」ということで読んでくださっていると思いますので、チェック・マークを入れながら読むことをお勧めします。どうしてもやり方が合わない時は他を試していただいて結構ですが、少なくとも私の塾では「国語が苦手」と言う人の8割以上に効果があります。結構高い確率だと思いますよ。

精読が大事なので、文章の中のどこに大切なことがあるのか、どこが問題のヒントになるのか、という読み方をするために、とりあえず騙されたと思ってこれから記すコツを実践していただくといいと思います。時間をかけて取り組める方は、すべてのポイントをマスターすべきですが、読み方のコツ1〜4くらいまでは比較的即効性もありますので、成果を出すまでに時間がない方はまずはこちらからやってみるといいでしょう。

それでは本題に入ります。まずは、読み方のコツについて。画面で見ながら実践していくのは大変ですので、必要な部分をプリントアウトしたほうがいいかもしれません。

読み方7つのコツ

その1 逆接の接続詞をチェック

有名というかまずはここからというか、逆接のチェックは簡単ですし、必須です。 説明的文章では、一般論や事実描写・筆者と対立する意見などを先に述べ、それを逆接で否定する形で自分の論を展開する書き方が非常に多く存在します。ということは逆接の後に筆者の主張があることが多いということですので、逆接が来るたびに身構えて読むと良いでしょう。およそ70%の確率で逆接の後は重要なことがやってきます。

そして、あわせてお伝えしておくと説明的文章の中で述べられる「一般論」は全然重要ではありません。なぜなら、説明的文章は筆者の「主観」を書いた文章だからです。筆者の視点(主観)に寄り添った読みだけが求められるのが説明的文章の読解です。 重要なのは、逆接のあと。接続詞にチェックを入れ、筆者の主張が顕れている逆接のあとに線を引こう。

その2 説明の接続詞をチェック

説明の接続詞は種類がたくさんあって絞りにくいですが、その中でも「要約説明(言い換え)」「例示」に注目すると良いでしょう。

要約説明の接続詞は、抽象化を行い、例示の接続詞は具体化を行います。前者は具体的な事実によって広がった話を抽象化して、筆者の主張としてまとめる働きがあり、後者は抽象的なことを分かりやすくするために具体例を使って説明がなされます。

説明の接続詞によって導かれている内容を、抽象化/具体化をきりわけながら読み取っていきましょう。そして、「抽象化」されている方を中心に理解していくと良いと思います。具体例はあくまで主張を分かりやすくするための存在であることを知っておきましょう。

その3 理由を説明している部分に注目

説明的文章とは筆者の主張や知識を説明していくものであり、その主張は根拠がなければ説得力がないものとなってしまいます。そのため、主張は根拠・理由とセットになって展開されていくことになります。

また、説明的文章の問題でもっとも問われることが多い設問は「理由を答えなさい」というものです。文章中の理由・原因・因果関係を示す言葉に注目していけば、そこが問題を解くときのヒントになるはずです。

その4 強調語に注目

あなたが、人に何か大切なことを説明しようとした時に、もっとも効果的に伝える話し方はどのようなものでしょう。

目を見て話す、声を大きくする、何度も言う、、、いろいろ浮かぶかと思います。

でも、もっとも効果的なのは、

「今からとっても大切なことを言いますね」

と前置きをすることだと思います。授業中でも先生がよく使う手のはずです。生徒に話を聞いてほしい部分や大切な部分で、「ここ、大事だよー」と言うと眠たくても顔をあげてメモを取ったり、話を聞いたりしますよね。同じことが説明的文章でも行われます。筆者は基本的に何かを伝えようとして文章を書いているので、強く伝えたい部分ではこの強調語を使用することが多く、読み手にここぞと訴えかける書き方となっています。

その5 ナンバリングに注目

説明的文章では、伝えたいことを項目立てして分かりやすく伝えることがあります。項目立て=ナンバリングをする理由は、「分かりやすくする」「読みやすくする」ことであり、そのようにして筆者が主張してきていることはいずれも重要なことであると考えられます。ナンバリングによって説明されている各項目の中心文に注目し、線を引いておくと良いでしょう。

その6 問題提起(問いかけ)における「問い」と「答え」に注目

説明的文章においては、主張やテーマを分かりやすくするために、筆者が読み手に対して問いかけ、それに答えていく形で論理を展開させていくことがあります。この場合、問いかけている内容と答えがそのまま筆者の主張の中心となってくるため、双方に注目しておくと主張の大意が捉えやすくなります。

その7 否定表現「ではなく」に注目

逆接の接続詞に近い働きをする言葉に、「〜ではなく」というものがあります。これに注目しておくと解ける問題が劇的に増えます。説明文は一般論や前置きをしておきながらその内容を否定して、自分の主張を繰り広げていく書き方が一般的なので、「〜ではなく」の後に書いてあることが非常に重要です。

読解のポイントとして挙げる人は少ないですが、実は設問にかなりの確率で直結するのがこの「ではなく」です。基本原理は対比している論理展開なので、逆接と変わりません。

解き方2つのコツ

続いて解き方。コツはたった二つ? と思うかもしれませんが、記述問題を正解するためにはもう少し別の力も必要ですので、選択肢問題の解き方を二つに絞ってお伝えしたいと思います。文章が読めてさえいれば、この二つがしっかりできるだけでもかなり正答数は変わります。記述問題については、また別の機会に記事にしたいと思います。

その8 分割法

実践していない方はすぐさまやってください。効果は抜群だと思います。

説明的文章の設問の多くを占める選択肢問題を解く上で非常に有効なのが、この分割法です。長い選択肢の文章を読点ごとに、もしくは意味の切れ目で区切りながら、それぞれの正誤をチェックしていくというものです。「バラバラ◯×△法」と呼び換えてもいいでしょう。

上記のような感じでつけていきます。その上で、×がないものが正解に近いと考えて、絞り込んでいきます。二択になればあとは△の数で比べるか、再度読み込んでいけば正解にたどり着いていくことが増えていきます。すでに「頭の中でやってる」と思った方も、実際に見える化することが重要です。これからは、選択肢を分割し、◯×△をつけていくようにしてください。慣れてくれば圧倒的に正答率が上がります。

例)

しつこいですが、これは絶対にやってください。必須のコツです。出題者は、正答の選択肢を作成して、そこから部分的にずらしていくことで誤答を作っていきます。そのため、全体として見ると概ね合っているように見えても、細部に相違点が存在するという構造になっています。細部に注目し、比較していくことが攻略法だと考えると、この分割法はかなり効果的な方法だと言えるでしょう。

その9 文末決定法

選択肢問題の意図が最大限に表れてくるのは、各選択肢の文末です。文末が文全体の意思を決めるのは、日本語の特徴と言えるので、上記の分割法と合わせて文末に一番の注意を払いながら選んでいくことが正解への近道です。

終わりよければすべてよしというほどではありませんが、「終わりダメならすべてダメ」であることは間違いありません。選択肢を途中まで読んで正誤判断をしないように気をつけましょう。

例)

そのほか重要なこと

その1 語彙力の強化

説明的文章をたくさん読み、解いていくと同時に語彙力を高めることも必要です。 ポイントをつかめていても、語彙が足りずに文章の内容が頭に入ってこないことはよくあります。論理的な文章読解が出来ても語彙力がなければ、内容を把握することはかないません。普段の生活で新聞記事を読んだり、ニュースを見たりするなど普段使い慣れない言葉に触れていくことも一つの手ですし、読書も効果的です。悠長に語彙力を上げている時間がないという方は、少し強引にでも自分の語彙力を引き上げるという手もあります。その場合は、下記のような本を参考にしながら鍛えていくと良いでしょう。小学生のマンガは実際内容もかなり面白いでし、中学生の語彙本もよく出来ていますので、関連語も含めて覚えていくと飛躍的に語彙力が伸びます。私の塾では、こちらの本を使用して中学生には毎週50問ずつの語彙小テストを実施しています。

小学生ならこちら

中学生ならこちら

その2 説明的文章に慣れるための読書

説明的文章に慣れていくためには、まずは学校の教科書をよく音読してみるのをお勧めします。文章自体もきれいに整っていますし、内容も十分に練られたものです。構造理解と語彙力強化のための音読は大変効果的です。

また、読書と言えば「小説」となりがちですが、最近は小・中学生でも読める良質の論説本が出版されています。ちくまプリマー新書から出ているものは、テーマ性もあり親しみやすくもあるので、興味があるものを探してみると良いでしょう。心惹かれるタイトルが多数あります。全国の高校入試問題でも頻出しているちくまプリマー新書は、説明的文章読解の力を上げたい方には最適です。

「そうは言っても選べない」という人のために、特に良いと思われる三冊を勧めておきます。いずれも、中学受験・高校受験で頻出する論説文です。「友だち幻想」は定番中の定番ですし、「中学生からの大学講義」シリーズは、章ごとの構成となっているので長すぎず読みやすくなっています。稲垣栄洋の新作「雑草はなぜそこに生えているのか」は2019年度入試でこれでもかと出題されることになるでしょう。

おすすめのトレーニング教材

最後は数です。もちろん、読みの質を高めながらという条件付きですが。 中学生は全国入試問題正解の説明的文章をかたっぱしから解きまくりましょう。 小学生(中学受験生)は、中学校の過去問をかたっぱしから解きまくりましょう。自分が受験する学校以外の学校の問題をまずはトレーニングで解いてみると良いでしょう。

えっいきなり? と思うかもしれませんが、一部の問題を除けば「読む」力を養うための良質かつ最新の問題は入試問題にこそあります。「解く」よりも「読む」をまずは重点的に鍛えましょう。「自分が持っている語彙よりも少し難しめの長文」が一番練習になります。最低20題。できれば50題解けば効果が出始めます。

ちなみに、現在中学生の方にも中学入試の国語の問題はお勧めです。長くてテーマが少し難しそうなものを選んでガンガン解いていくと良いかもしれません。

もし、もう少し入門編を…ということであれば、中学生なら塾の問題集、教育開発出版の「新中学問題集」、市販のものであまりいいものはありませんが、あえて言うなら最高水準問題集が良いでしょう。小学生なら塾のテキスト「予習シリーズ」「新演習」、啓明舎の問題集の中から説明的文章をチョイスして取り組みましょう。より長文の方が良いですので、「応用」か「完成」をお勧めしておきます。

おわりに

なぜ、説明的文章を読むのでしょうか。

それは、知識を得る時、何かを吸収しようとした時、私たちが読む文章の多くは、説明的文章だからです。学術的な論文だけでなく、インターネット上の記事や新聞記事に至るまで、皆さんは今後も数多く説明的文章に触れていきます。また、論理的かつ構造的に書かれている説明的文章は論理的思考を養う上でも効果的です。

相手が伝えようとしていることを的確に読み取り、自分の知識として得て活用していくために、説明的文章の読解力が礎となります。人物像や人の気持ちを理解することは、日常生活の中でも十分に培われていく可能性がありますが、文章を論理的に読み取る力は、相応の読解トレーニングを積んだ方が高まります。多読も大事ですが、精読し、深読していくことが読解力を向上させることにつながります。入試問題を解くために読解を練習するのではなく、その先も見据えて説明的文章読解をやっていくと良いでしょう。

説明的文章の読みを深めていくためのコツと解き方のコツをお伝えしてきました。最後までお読みいただきありがとうございました。

筆者プロフィル
この記事を書いた人
中本順也
すばる進学セミナー塾長 ・1981年4月18日東京生まれ。 ・慶應義塾大学文学部国文学科卒業。 ・中学校教諭一種免許状(国語)、高等学校教諭一種免許状(国語)取得。 ・ブラザー工業株式会社の販売部門、ブラザー販売にてマーケティング、営業を数年間経験。 ・2007年より現職。
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