取材日:2016年11月15日 インタビュイー: 宗教科 平松恭詩朗先生 インタビュアー: 早稲田大学教育学部2年生 上杉直矢
上杉:まず最初に、先生のお名前やニックネーム、それから担当教科とか、クラブ活動の顧問など、自己紹介していただければと思います。 平松先生:はい、喜んで。聖光学院、宗教科の平松と申します。現在、聖光学院では5年目、至って新米なんですが、図書室と、あとは、中学生の宗教という教科を担当しております。 部活は特に持っていないのですが、中1の放課後に行われている聖書研究会という勉強会を任されております。あとは、保護者のキリスト教の勉強会ということで「アガペ会」というものも担当しております。 上杉:宗教科の先生としてのお仕事より、キリスト教としてのお仕事が多いんですか? 平松先生:キリスト教としてのお仕事とは? 上杉:キリスト教に関する講座みたいなものが多いんですか? 平松先生:そうですね、はい。そちらを任せていただいております。 上杉:なるほど。ちなみにその宗教っていうのは、中高である授業なんですか? 平松先生:えーっとですね、教科としては中学校のみということになってますが、高校では、宗教朝礼という形で、毎月ですね、校長先生が宗教の話をしております。教科としては、あくまでも中学校の授業という形でやっています。
上杉:じゃあその図書室、在庫書籍数ってどれぐらいですか? 平松先生:あ、良い質問ですね。 上杉:(笑) 平松先生:こちらの図書室の在庫書籍数は、なんと39,060冊と意外と多いんです。外側から見るとちょっと数少ないように見えるんですけれども、閉架書庫っていうのが隣接してまして、そちらの方に本が入っています、見た目以上に本が収納されていますね。 上杉:約4万冊もの本があるという・・・ 平松先生:そうですね。それは自慢してもいいんじゃないかなぁと思います。 上杉:かなり多いですよね。中学校、他のとこと比べれば。 平松先生:そうですね。分野も多岐に渡っています。最近ですと英語科教育に力を入れているので、英語の書籍、洋書の本が増えてきているところです。 平松先生:あと、私が入ってきて、私の好みもあるんですが、宗教関係の本を少し増やしているところと、あと宗教だけじゃなく哲学関係の本、書籍にはそれぞれ請求番号というものがふられてあるんですけれど、そこで言うところの1番(哲学・宗教)。その1番の書籍を、ちょうど今、増やしているところです。 あと特徴としては、9番(文学)のファンタジー関係の書籍は比較的、他の学校図書室より多いんじゃないかなと思っています。ファンタジー関係の、例えば有名な本ですと「ハリー・ポッター」とか。ああいうジャンルの書籍は結構入っているんじゃないかなと思います。 上杉:やっぱりファンタジーは、生徒に根強い人気があるんですかね。 平松先生:そうですね。先生の方にもファンがいまして。 上杉:先生の? 平松先生:はい。図書室のファンタジーの本は全部読んだとかなんとか…、という先生もいらっしゃるぐらい、根強い人気のジャンルではありますね。 上杉:ああ、そういうことですね。生徒だけではなく先生も利用される図書室なんですね。 平松先生:そうですね。比較的先生の利用者数も多いんじゃないかなって思ってます。定期的に、借りに来てくださっていますし。 上杉:はい。 平松先生:テストの期間中であるとか、そういった時間ができた時に図書室に来て借りて行ってくださっています。昔の図書室に比べると、より利用者数としては増えているんじゃないかなと思います。 上杉:先程ファンタジーが好きな先生の話がありましたが、 平松先生:はい。 上杉:他にも何か、先生にどのような本が読まれているとかってありますか? 平松先生:あー、そうですね。例えば時代小説を借りていかれる先生もいますし、あとはちょっとコアなのかもしれないんですが、農業系の本とか・・・? 上杉:農業系…? 平松先生: 6番(産業)という番号にあたるんですけど、こういった分野を借りてかれる先生がいますね。まあでも、比較的多いのはやっぱり時代小説になってきますかね。読みやすいってのもあると思うんですけども。 あとは、先生が勉強するっていう意味で、専門書も並行して所蔵してるので、図書室としては、生徒だけじゃなくて、先生も利用できるような形になっています。学術的な幅があるような蔵書にしているところです。 上杉:小説だけじゃなくて色んな分野の蔵書もそろってるということですね。
上杉:じゃあこの図書室っていうのは、どのくらいの座席数がありますか?
平松先生:そもそも図書室は閲覧室と、図書自習室に分かれてまして。 閲覧室の方の座席数だと、椅子が20脚。ベンチに該当するところが8席分。あとはソファのような椅子があるんですが、こちらが6席分といったかたちになってます。 上杉:その図書自習室はどのくらい席があるんですか? 平松先生:図書自習室ですか、けっこう多いですよ。40・50くらいはあるんじゃないですかね。1クラスは確実に入るような計算になってますので、50席分ぐらい用意されてますかね。 上杉:図書自習室で本を閲覧することも可能なんですか? 平松先生:もちろん可能なんですが、高3の先輩が勉強してるので、その空気に耐えられればの話です。 上杉:(笑)。 平松先生:全然読んで構わないんですけども。 上杉:主に、受験生とかが勉強してるスペースということですね。 平松先生:はい、そうですね。面白いところは、昔は高3の生徒が多かったんですが、今は、中1の生徒とか、色々な学年の生徒が交じって勉強している姿が見られます。 上杉:ほー。 平松先生:とても興味深い空間にはなってますね。教室とはまた違う、先輩と後輩が並びながら勉強してるっていう姿も見られるので。まあ高3に限ったわけじゃなく、勉強したい子がここで勉強するっていう感じですね。
上杉:じゃあその生徒は、この図書室をどのくらいの頻度で利用されるんですか?
平松先生:そうですね、まあ自習室の方はまた別として・・・ 上杉:はい。 平松先生:一応データの方では、月にですけど、1,344冊、借りられてます。こちら28年度の4月のデータなんですけど、4月の開館日数の19日間で考えますと1日平均70冊ぐらいを貸出、そして返却するというかたちで動いてます。比較的増えてきてるんではないかなとは思うんですけど。 上杉:毎日70冊ぐらいの・・・ 平松先生:本が貸出されていると。 上杉:うーん。なるほど。
上杉:生徒が利用する際に、読みたい本をなにか注文してくれとかっていうような、発注サービスってありますか?
平松先生:そうですね、書籍の希望があった場合、購入希望図書のための紙がありまして、まずはこちらの紙に書いてもらいます。ただ、利用者が中学生とか高校生っていうことで、結構入庫できない書籍、要するに図書室にふさわしくない本とかをこれに書かれたりすることもあるんですけど。この場合は図書委員がその書籍を入れるべきかを選考した後に、図書室のスタッフが本を入れてもいいと判断をし、それを館長に申請するっていうような形になってます。先生がいきなり頭ごなしに、「これはダメだ」って決めるやり方ではなく、図書委員がまず入って、話を通すという形で購入希望を出してもらっています。 上杉:じゃあ、図書室にある本の中で、生徒による希望で入ったものも多かったりするんですか? 平松先生:そうですね。もちろん、そういうような形で入れてもらった本はあります。あるいは図書室で紛失した本とかも購入希望に書かれることがあります。例えば上巻しかないとか、下巻がなくなってますよっていうことで、発注かけてくださいというような申請とかもあります。これぐらい数多いとなかなか気づかないことがあるので、その気づきにくいところに気づいてくれてありがたいですね。あと、最近ブームになっている本とか、いち早く入れてくださいとかってかたちでの要望とかもあって、そういうのは比較的通りやすいかなと。
上杉:貸し出しのベスト3をズバリ、教えてください。 平松先生:はい。ちょっと恥ずかしいかもしれないんですけども、第1位、これ、『都会のトム&ソーヤ』。はやみねかおるさんが書いた、あの『都会のトム&ソーヤ』っていう本です。 上杉:はい。 平松先生:で、2番目が、『天空の蜂』になってますね。 上杉:『天空の蜂』 平松先生:3番目が『図書館危機』。まあ、図書室にふさわさいいんじゃないかなって。何が危機な のかは別として。今のところ、このかたちで順番が決まってますね、
上杉:先生が、生徒にこんな本を読んで欲しいなっていうようなものはありますか?
平松先生:本を読むっていう文化がそもそもいいことだと思うので、活字っていうものに触れることはいいことだっていう考えからすれば、今の図書室にあるもの全部に触れてもらいたいところではあるんですけれども、 上杉:はい。 平松先生:やっぱりキリスト教の学校ですし、僕の教科がそもそも宗教科っていうところもあって、読んで貰いたい本はキリスト教関係の本か、あるいは宗教に限定しないのであれば、哲学関係の本ですね。 哲学書は、視野を広げてくれる本だと思いますので、私の主観なんですけども、哲学関係の本には、触れてもらいたいかなーと思ってます。 上杉:うーん。あのキリスト教とか、哲学系の書籍とかっていうと、どうしても難しいイメージがすごいあるんですけども。 平松先生:そうですかね。 上杉:中高生にも読めるようなものですか? 平松先生:頑張れば。 上杉:ふむふむ。 平松先生:読んで欲しいっていう、あくまでも願望で、読めるかどうかはまた別なんですが。最近ですけども貸出書籍をみると、哲学関係の本を借りている生徒とかいるんですよね。少し読みにくい本ではあるんですけども、手を出している子もいますので。頑張れば読めるものだとは思います。 上杉:入門的な本みたいなものも入ってたりするんですか? 平松先生:もちろんあります。原書、あるいは岩波文庫で出ているような哲学者が書いたそのままの文書もありますが、意訳のような本とかももちろんあります。 上杉:あー、なるほど。 平松先生:それでも、いわゆる嚙み砕いた入門書だけじゃなくて、原文も読んでいけるんじゃないかなって思います。特に高校生に関してはそう思いますね。
上杉:では、平松先生が個人的にお好きな本っていうのはなんですか? 平松先生:あ、好きな本ですか。まー聖書ですよね。 上杉:ああ。 平松先生:それはちょっと置いといて。遠藤周作先生が書いた、『深い河』とか、あと『沈黙』は好きです。キリスト教の書籍だから好きなのかっていったらそういうわけではないのかもしれないですけど、人生観が変わったり、深みがあるような本に触れるのが好きですね。あとはキリスト教関係だったら三浦綾子さんの『塩狩峠』とかは、中学生も触れやすい本だと思いますし、僕自身も中学生の時にこの本に触れたのですが、今でも忘れられない本です。多感な時期っていうんですかね、その時期に読んでもらうとまた違った味わいになってくるのかなーと思います。 上杉:あーなるほど。生徒自身が考えるっていう意味でも、小説でそういうのを考えるキッカケになるってことですかね。 平松先生:にもなると思いますね。あの、先程言った読んで欲しい本の話では、哲学的な専門書を読んで欲しいというようなことを言ったんですけども、小説もまた読んで欲しい本ですね。 小説だと、人の心情とか全て書かれてるわけじゃないんですけど、ストーリーがあるために読書としてとっつきやすい部分もあると思うんですね。そういったことを考えますと、小説から入ってもらって、人の気持ちであるとか、まだ体験したことないことを疑似体験し、成長できると思います。大人の主人公の心情であるとか。 この学校は男子校ですので、女性がいないということで恋愛経験も少ないかなって思うんですけど、そういったことも小説を通すと理解することができると思いますので。そういった意味では小説、いいんじゃないかなと思います。
上杉:平松先生から見て、聖光学院っていうのはどういった生徒が多いと思われますか? 平松先生:あー、なるほど。勉強熱心な子はやはり多いかなって思うんですけど。その、何と言うか、切れ味があるかなあっていうか。ちょっとひいき目に見て言っちゃってるんですけど。 鋭い角度で攻めてくる。質問もそうなんですけど、対応の仕方であるとか、着眼点であるとか。切れ味はどんどん、年々鋭くなってきてるんじゃないかなって思います。 上杉:なるほど。それを感じたエピソードとかってありますか? 平松先生:すごいくだらない話なんですけど、ぜひ載せてもらいたくない話なんですが、 上杉:(笑) 平松先生:課題を出したんですね、夏に。本を読んで作文を書いてくださいっていう課題を出したんですけども、僕は目ざといので、コピーアンドペーストをするのにすぐ気づくんですね。 上杉:はい。 平松先生:それで「あ、これはWikipediaのコピペだ」って気づいて、「コピーアンドペーストは人の文章を盗むことだからダメだ」というように言ったところ、生徒は「いや先生、別の考え方もありますよ」と言ってきたんです。 上杉:ふむふむ。 平松先生:それはどういうことだいって言ったら、「Wikipediaを編集したのがその生徒かもしれませんよ」といってきたんです。 上杉:あー。 平松先生:まあ100パーセントそれはないんですけれども。 上杉:ははは(笑)。 平松先生:確かにその可能性があったね、となりました。着眼点すごいと。こちらも大人の対応していかなきゃいけない部分でもあると思うんですけども。 上杉:そうですね。 平松先生:逆に言うとそこが個人的には楽しいところではあるのですが。 上杉:そういうところは楽しんでらっしゃるんですね。 平松先生:はい。そうですね。 上杉:なるほど。 平松先生:負けじとって思ってしまう。 上杉:(笑)。 平松先生:トントントン、というふうに話が進んでいくのがそもそもすごい。やはり会話が苦手で、あるいは話がついていけなくなったらすぐに話って終了してしまうと思うんですけども。年代が違う教員と茶目っ気ある話を混ぜながら対話ができているっていうのがすごい。大人ときちんと会話できる子が多いかなって最近は思います。そういった点で、比較的、生徒も向上してきてるかなと。個人的な印象としての話ですけど。 上杉:それが年々上がってるんですね。 平松先生:はい。年々上がってきてる印象ですね。自分が在籍していた頃よりも、ますますそういった傾向の子が増えてきたんじゃないかなって思います。 上杉:はい。 平松先生:あと、まあ子供っぽいところも当然あります。 上杉:はい。 平松先生:中学の担当をしてるので、中学生に触れる機会が多いんですけども、中学生はまだまだ、子供らしいところも、備わっているので、そこも個人的には楽しんでいます。 上杉:なるほど。先生は卒業生でいらっしゃるんですよね。 平松先生:あー、そうですね。何年前かな。15年くらい前に入学したっていうことになるんですかね。 上杉:なるほど。 平松先生:はい。 上杉:その頃と比べて、中学生高校生それぞれに、大きく変わったところはありますか。あるいは全く変わってないというところはなんでしょうか? 平松先生:えーと、変わったところは、昔よりも学校が好きだっていう生徒が増えたこと。 上杉:ほー。 平松先生:年々、第一志望にして入って来てくださっている生徒と保護者の方が多くなってきているように感じます。 上杉:なるほど。 平松先生:ご両親も学校に楽しんで参加されているっていうような印象を受けますね。 上杉:説明会とかですか? 平松先生:説明会とかも含めて。文化祭とか、体育祭の時とかにも感じます。 上杉:なるほど。 平松先生:実際は、アンケートとったわけじゃないので分からないんですが、そういうような声をよく聞くようになってきたかなって思います。 えー、その他に変わらないところ…変わらないところ。やっぱり、うーん、勉強が好きってところなんじゃないかなって。 上杉:そうなんですか。 平松先生:「好き」って言うと語弊があるんですが、何と言うか「切っても切れない関係」?っていうんですかね。勉強に熱心に取り組んでるところとかは変わってないかな。 うん、まあ、あと、何ですかね。 うーん、知らないもんねー、上杉君は昔の聖光。 上杉:そうですね。 平松先生:あとは、そうですね、明るく! より明るくなってきたんじゃないかなって感じます。 上杉:なるほど。 平松先生:あと、帰国生のクラスっていうのが数年前にできたのですが、その影響からなのか学年の雰囲気が変わったようにも感じます。帰国生のクラスというのは全員が帰国生なわけじゃないんですけども。 上杉:はい。 平松先生:英語が非常に得意で、そういった生徒を一つのクラスにまとめるようになったんですね。そうなってから、より学年のカラーっていうのが出てきたんじゃないかなと思います。何か直接的な関係があるのかは分からないんですけれども。 上杉:はい。 平松先生:そのクラスの明るさと、それが全体に及ぼす空気感っていうのが、年々広がってるんじゃないかなと思います。より元気に明るく。中学生を受け持っている立場の意見ですが。
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