取材日:2016年9月11日 インタビュイー:英語科 平塚崇先生 インタビュアー:東京農業大学4年生手塚諒・外資系経営コンサルティングファーム勤務 奥村勇真
手塚:授業で使っている教材を見せてください。
平塚先生:これが中1の授業で使っているワークシートです。中1では何が必要なんだろうと考えた場合に、日本語とはまったく別の言語なので、まずは文字から、発音から覚えようということで。それで一生懸命頑張ってたくさん書かせようと考えています。特にないがしろになりがちなのは、ヘボン式のローマ字なので、それを考えてヘボン式ローマ字を書かせてから、教科書に出てくる単語を辞書を使って調べさせて、発音記号も書かせる。 ローマ字と発音記号は関係があるので、そういう風にやって慣らしていこうと思ってやっています。大学受験用の参考書や特に単語帳などを見たら発音記号が出てるんですよね。それを読めない生徒がすごく多いので、単語が覚えられないって嘆くわけですよ。そんなのは、あの発音記号を読めば簡単だし、英語が得意な人は当然読んでいるわけですから、そういうことをはじめから当たり前にできるようにしていこうということでやらせています。 また、これは授業の補助のプリントです。家に帰ったらやってくださいっていう感じのことで、徹底的に並べ替えの語順をしっかり理解させること、それからあとは書き取りですね。同じような単語、曜日とか月とかを書かせるとか、その場合にもヘボン式を必ず読ませるとか、1学期の最初のうちはこうなってます。
手塚:うーん。
平塚先生:途中から慣れてきたら、あとは並べ替えとか、真っ白なところから書かせるとかしながら、文をそのまま頭に刷り込みさせるような感じのプリントにしています。市販のものが使えれば一番楽なんですけど、見当たらないので自分で作っちゃい
ました。 手塚:これが、中学1年生でまだ英語をまったく勉強していない生徒向けの教材なんですね。
平塚先生:はい。勉強していた生徒向けのプリントもあるんですが、以前、塾の講師をやっていた時に使っていたもので、今は改編中ですね。作り直しています。必ずしも実態に合ってはいないので。
手塚:城北埼玉では、中1で英語につまずく生徒は多いですか。 平塚先生:そうですね。それはおそらく家庭学習、繰り返しの習慣がないことによるので。能力がないとかではないのだと思います。 手塚:ふーん。 平塚先生:同じことが、国語の漢字の書き取りとか、数学の単純計算のミスが多いことにも見られているので、英語だけではなくて、根っこは一緒なんだと思います。 奥村:なるほど。 手塚:プリントに所要時間を書くところがありますが、何分を目標にやらせていますか。 奥村:それは内容よって変わるじゃん! 平塚先生:そうですね、例えば1回だけじゃなくて、もう1回やらせたりするときには、本人がどれくらい短くなったかって自分の中での成長を感じてもらえればいいと思っています。特に何分を想定しているっていうわけじゃないですが、できる生徒にとって は、ものの5分でできるんですよね。できない生徒は30分や40分かかります。不思議ですよね。人と比べてもしょうがないので、自分の中の成長が分かればいいと思って書いてます。
手塚:ふーん。 奥村:クラスには、いろんなレベルの生徒がいると思うんですが、どこに照準を合わせて授業してますか。 平塚先生:基本は真ん中から上ですね。ここは私学なので、真ん中から上に合わせて、下は補講で補うというかたちですね。結局上と下の違いは何かというと、家庭学習の時間の確保の違いだと思うんですね。 奥村:はい。 平塚先生:部活もそうだと思うんですけど、上手な生徒はなぜ上手かっていうと、運動の場合は運動神経っていうのが残念ながらありますが、それにもまして、自分で自主練をしている時間の多さが上手い下手の分かれ道じゃないですかね。勉強も同じだと思うので、結局頭が悪いのではなくて、頭の使い方が悪いとか、頭が良いのではなくて使い方が良いという。そんな風にいつも自分は思っています。いつも上の方に合わせてやっていくんですね。今の時点では。 奥村:うーん。 平塚先生:できない生徒は、どうすればできるようになるかを口すっぱく言いながらやってもらえば良いと思います。決して捨てるわけではないので。 編集部:だいたい1学期でどういうふうに勉強、英語に取り組めばいいかっていう基礎を学んで、2学期ぐらいからは自分でそれが出来るようになる、そんなイメージですか。 平塚先生:そうですね。2学期になると宿題の量をちょっと減らしてみて、自分で考えて何か課題ができるようなそういう部分を作ってます。中学1年は、学年全体として家庭学習の時間を身につけてもらうことを主眼にしています。1学期のうちは、3教科の宿題の分量を調整してホチキス止めして渡してチェックしていますね。
2学期になったら、それを教科ごとに減らして、残った時間を自分で考えてやりなさいという「自学ノート」というのを作らせて、そこにやるようにと言ってますね。自分で考える部分を多めに取らせるようにしています。それで勉強の習慣をつけさせるっていうのが中1のポイントですよね。中2くらいになればそれがどんどんできるようになっていって、高校生にもなれば、校訓にもあるような自主性のある生徒が育ってくるので、こちらが宿題なんて余計なものをなるべく出さないようにした方が自分で勉強できて良いのかなって思ってます。 奥村:実際の話、それって実現できてるんですか。 平塚先生:中学校から入った生徒たちに関しては、残念ながらできていない生徒が多いんですよね。なぜかというと、高校受験というプレッシャーがないのでやらなくてもどうにかなっちゃうからです。自分はここのOBですけど、やっぱり高校受験をして 入ってきたから、この「着実・勤勉・自主」っていう校訓のもと、当時はあまり宿題は出されなかったので、自分でやる時間があって大変良かったですね。今は「宿題を出してあげた方が親切だ」ってよく言われるんですよ。親御さんも宿題で縛ってくれと望んでいる方も多いようですけど。 奥村:うーん。 平塚先生:実はそれは間違いですよね。そうじゃないと大学受験や就職活動でうまくいくはずはないので。そんな生徒を作っていけるように、中学では話し続けて理解してもらって、「できるんだ」っていう気持ちで勉強に向かってくれる生徒を育ててい こうと。それは自分だけじゃなくて学校全体としてですね。そんなことをやってます。それで、その役割を担うように、先ほどお話したような宿題の出し方をしてるんですよ。 奥村:うーん、なるほど。 編集部:先生のプリントは書き取りがメインになっていると思うのですが、音読とかは重視されていますか。 平塚先生:もちろんです。指導者はよく音読をしろって言うんですけど、やり方を間違えているものが多いですよね。なぜかというと、読ませてみてみんな読んだ気になってるけど、実際はカタカナ読みしてますよね。 奥村・手塚:あー。 平塚先生:フランスやイタリア語だったら日本語と同じタイプの音の性質を持っているからいいですけど、ドイツ語やイタリア語は違いますので、カタカナ読みしても読めないんですよね。だから、発音記号なんですよね。発音記号をしつこく書いて、授業 中にブツブツ一緒に読んで、そして書くときは読みながら書きなさいということで、常に発音記号がすべてに振られていますね。 編集部:うーん。 平塚先生:まず、書きながら読んでというふうにやりますので、おのずと発声の練習にはなってるはずなんですね。授業中では、NHKの基礎英語とか併用しながら、ちゃんと聞いて話す。1個ずつ話すときの発音と、繋がったときの発音が違うということ も初めから教えてやっていくようにしていますね。カタカナ発音ではいつまでたってもできないので。そのようなことを指導してるんですけど、やっぱりそれができる人とできない人がいます。 手塚:なるほど。 奥村:読解は何かしていますか。 平塚先生:読解は中1の段階では、おそらくあまりできないかと。短い文を使い、基本的な文法を理解して、その数が増えていけば、そういうものの集合体としての文章というのがおのずと読めるようになったりもするので。そうなってきた頃に考えていま すね。
奥村:中2の終わり頃からですか。 平塚先生:中1の終わり頃からそういう文が増えてきますので、読めるようになると思いますよ。実際、英検の5級や4級レベルはそこそこの長さの文は出ますので、対応できるように考えています。 奥村・手塚:ふーん。
編集部:夏休みに4日間、ネイティブの先生と話す合宿ができたと伺いましたが。 平塚先生:「国内ミニ留学」と称しまして、学年全体をシャッフルして、グループに分けて、そこにネイティブの先生を1人つけて1日中英語漬けになるというようなものをやるんです。 1学期は、そのときの会話で出てくる文章とか単語とかを、あらかじめこちらが把握しておいて、その業者と打ち合わせて、それに合わせて教科書もちょっと通常よりも早めに進めてみたりとか。あとは、そのようなことを意識して日頃から学校にいるネイティブの先生ともお話ししながら、それを1つの目標にというふうにやっていきますね。目標を設定すれば、それなりにできそうだと思うので。やってみると実際みんな結構しゃべってるんですよね。 奥村・手塚・編集部:へえー。 平塚先生:それはやっぱり、穴埋めとかではなく、とにかくフルで英語を言わせるようなことをやってきた1つの形なのかと思います。また英語漬けになる機会があって、今度はブリティッシュ・ヒルズという福島県にあるハリー・ポッターの世界を模したテーマ パークがあるんですけど、そのテーマパークに行ってそこにネイティブの先生を招いて、そこでバリバリ英語をやっていく。それが中学2年生の目標なので、そこに向かってやるよということを今から明言しています。そうじゃないと、高校受験のない生徒の場合は英語が嫌いになっちゃうし、モチベーションがないのでうまくいかないですよね。
編集部:確かに奥村くんは城北埼玉には高校からの入学で英語がすごく得意で、手塚くんは中学からで英語があまり得意じゃないもんね。 平塚先生:やぱり、高校受験があるかないかの違いが奥村くんと手塚くんにもこれだけ出てるんですよ。能力の差じゃないんですよね。何か目標があるからやるという差なので、それを引き出せたらなと思います。中入生は宝ですから!最初からお預 かりしているんだから、伸ばさなかったら学校の責任なので。 編集部:最近多くの学校で多読プログラムをやっているというのを取材でよく聞くんですが、御校もやっていますか。 平塚先生:中1とかではもちろんできないんですけど、この先やることは当然考えていますよね。あとは、多読のプログラムに入る前には、文法をガチガチに理解して、基本的な文を解析的に読むというプロセスが必ず必要なんですね。 それを過ぎると、そういったことが自然に頭に入ってくるので、いわゆる「フィーリングで読める」ようになります。
フィーリングで読めるというのは、初めは文法をガチガチに意識しているんだけど、その文法を意識しないで読めている状態だと思うんですよ。だから、奥村くんみたいに英語が得意だった生徒はそいうことができていたんだと思うし、英語ができない人は手塚くんみたいにフィーリングで読んでしまう。言葉だけ聞いて文法とかもきちんとやらないまま、とにかくたくさん読む、音読するとか言いながらいい加減な発音でダラダラ適当に読むのでは、結局できるようにならないんですよね。そういうような、巷にある「言葉をきちんと理解しない」ような多読ではなくて、本質的にきちんと理解できるような多読を考えております。 編集部:すごいですね! 奥村:そうですね、平塚先生は城北埼玉一押しの先生ですから。 編集部:ちなみに、平塚先生の言った通りの方法でずっと勉強したら、センター試験で何点取れますか? 平塚先生:190点は超えますね。 手塚:すごい! 奥村:まあ、僕はそのやり方で実際190点以上取りましたから! 平塚先生:自分が受験の時は196点だったのですが、間違えたのが発音問題なんですよ。悔しかったので、そのことをずっと生徒たちに言い続けて、「俺の代わりに大学入試センターにリベンジしてくれ」って言い続けてたら、過去に200点満点を取 った生徒が2人出たんですよ。 奥村:へー! 手塚:すごいですね!
手塚:受けている学部はどこが多いですか。 平塚先生:理系が多いですね。なぜかというと、この学校の生徒は全体的に英語が弱いからなんですよ。 奥村:一番大事ですよね、どっち行くにしても。 平塚先生:それは、高校受験っていうプレッシャーがないから、トレーニングをあまりしないんでしょうね。でも半々くらいでやや理系が多いくらいですね。
手塚:塾は、どれくらいの生徒が行ってますかね。 平塚先生:塾の内容ってさまざまで、目的も、学校の授業についていけないから行くのか、学校の授業がだけだと物足りないから行くのか。形態についても、個別か大人数かビデオか、いろんなマトリックスがあると思うんですよ。 奥村:体感的には、どの程度行ってますかね。 平塚先生:3人に1人程度かな。学校の授業のフォローを目的としたところが多いですかね。今は、東進のビデオ系がありますが、東進に行人はできる人で、授業の先取りって感じかな。その他の人は、困っている。塾に行った方がいんじゃないかって 困っている。
奥村:多分、高3とかになって行く生徒が大半なんでしょうね、「行かなきゃ」っていう謎の焦りだけで。 平塚先生:アウトプットする時間がないと意味ないんですけど、それが分からない方は塾に行くんですよ。 奥村:僕のクラスにもいました、ついていけないから塾に行ってた生徒。
平塚先生:キャリア教育については、中3のうちに、どんな仕事があるのか知っておきなさいということは言っています。その仕事に就くために、大学は学部学科というものに分かれているということを知るのがスタートですね。 手塚:業界研究とかね。(笑)就活と同じようにね。 平塚先生:本当は、就活とかでやっているもっと可愛いことを高1とかでやらせたほうがいいんだと思います。それから行けばいいんですよ、オープンキャンパスに。
奥村: 2020年に大学入試の制度改革があるって聞きました。それで、いろんな学校がそこに対応しないといけないと考えていると思うのですが、城北埼玉はそこに向けて今の段階で何か動き出していますか。 平塚先生:はい。入試が変わるということは聞いていて、どんな変更があるのかというのを今はリサーチしている段階ですね。特に、予備校がリサーチして、文科省の中でのワーキンググループで出た話とかをこちらに解説してくれるという催しがあるんで す。そこでいろいろと話を聞いてみると、文科省としても実はかなり迷っていて、変えることは決まっているけど、どのように変えるのかは実は決まっていない、イメージできていないと。要するに、記述式のものを入れたいと言っているんですけど、それもどういう形になるか分からない。採点の問題があるとかですよね。
あとは、今のままだと思考力が測れないと言われているのですが、それは結構間違いでセンター試験はよくできた問題で思考力を測れているんですよ。本質的な理解をした上で勉強していれば、形式がどのようなものであっても同じように対応できるはずですよね。私は、数学と理科、英語の教員免許を持っているのでいろんな生徒を見てきました。その中に、センター試験の数学で点数が取れないと言ってる生徒がいるのですが、そういう人たちの特徴は基本パターンを丸暗記ですね。 手塚:なるほど。 平塚先生:センター試験は、本当に理解しているかどうかを聞いてくるので、一見、パターンにハマってないように見える問題を作ってくるんですけど、分かっている人がそれを見ると「あー、あれね」って分かるんですよ。そういうことを理解されないまま、「ただのマークシートの試験では基礎力、理解力が測れない」とか言われていますが、センター試験の問題は実はきちんと考えられて作られているんですよ。
英語にしても、昔に比べると本当によくできた問題で、”国語っぽい”問題になってるんですよね。センター試験は、それなりに工夫された問題で、本質的な勉強、正しい勉強をしていれば、どのような形式のものが出てきても対応できるので何も問題がないと思います。むしろ、自分がやっているのは、国立大学の2次試験型に対応できるような勉強ですので、センター試験がどんな形になろうと何の問題もないと思います。 奥村・手塚:なるほど。
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